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2022/02/10

【9】企業としてのプロジェクト管理の仕組み作り(7) ~リソース稼働管理編~

みなさんはプロジェクトのリソース計画・管理をどのようにしているだろうか。

昔は比較的規模が大きいプロジェクトが多かったため、プロジェクトで納期内かつ予算内に完了させるためのリソースを計画・管理が考えられていたように思う。

しかし、グローバル化や通信の発展にあわせ、各企業間での競争が激しくなりプロジェクトが低利益化、短納期化し、個別プロジェクトで十分な利益の確保が以前より難しくなるにつれて、企業としてリソース計画・稼働管理をどのようにするべきかが考えられるようになってきた。

下図は経営理念から考えるポートフォリオマネジメントのピラミッドに企業のリソースを当てる図となっている。
かつては各プロジェクト内でリソース管理が行われ、管理方法はプロジェクトに託されることが多かったが、最近では短納期の複数プロジェクトを抱える企業が増え、プロジェクトをまたいで、リソースを効率的に活用しようとする動きに変わってきた。

例えば、企業内に全社のプロジェクトを支援しモニタリングする立場のPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)などを設置し、全社要員の稼働を可視化して非稼働要員を利用することにより、外注費を削減したり受注活動に割り当てて受注増を狙うなど、限られたリソースを最大限活用するための検討や調整を行っている企業も多くなっている。

まさに、プロジェクトのリソース管理から企業リソース最適化へ注目度が変化してきているのである。

では、企業リソース(要員)最適化のプロセスについて紹介していこう。
下図は企業リソース最適化のプロセスを示している。

各プロセスの詳細は次の通りとなる。

① リソース情報の登録
  ここではリソースの属性、分類情報を登録する。
  リソース情報の属性や分類として、以下のような項目が想定される。
  <属性項目>
  リソースID(社員番号など)、リソース名、1日の投入制限量、役割など
  <分類項目>
  部署、雇用カテゴリなど

② 要員計画の確認
  ここでは、中期経営計画、期首計画の要員計画を確認する。
  中期経営計画、期首計画の要員計画にて要員のキャパシティが決められるため、企業リソース最適化の制約
  条件となる。

③ プロジェクト要求確認
  ここでは、プロジェクトからのリソース要求を確認する。
  プロジェクトからのリソース要求はリソース最適化の調整対象となる。

④ 要員稼働計画の確認
  ここでは、要員稼働計画を確認する。
  要員稼働計画はリソース最適化のベースとなる。

⑤ 分析、調整
  ここでは、① ~ ④ の登録/確認情報とプロジェクト・ポートフォリオにて分析したプロジェクト優先度を
  もとに分析、調整を行う。

下図は、企業リソースの最適化の分析・調整を絵にしたものであり、① ~ ④ の情報のほかに企業のプロジェクト・ポートフォリオ分析による経営判断を含めたKPIをもとにしたプロジェクト優先度結果の情報を加え分析・調整により企業リソースが最適化されていく。

ここまでリソース稼働管理をテーマに企業リソースの最適化について述べてきたが、この仕組みを実現するにはシステムの活用が不可欠である。

ではここからシステムを活用した、企業リソースを最適化するリソース稼働管理について説明していきたいと思う。今回はプロジェクト・ポートフォリオマネジメント機能を持つ Oracle Primavera P6 を活用した例を紹介する。

まずは ① リソース情報の登録 と ② 要員計画の確認 であるが、下図のとおり要員情報、スキル(または役割)情報、年間の要員投入計画(月別など)を社内システムなどから Oracle Primavera P6 へ取り込む(システム間の連携開発は必要)ことで実現する。

次に ③ プロジェクト要求確認 であるが、ここではプロジェクトから必要要員を要求するところから説明したいと思う。
下図はプロジェクトのスケジュール計画者が必要要員と工数を割当てている。

各プロジェクトからのリソース要求を企業全体で確認すると下図のようになる。
下図は現在遂行中または計画しているプロジェクトと各要求されている役割の工数山積みを示している。下図の例では、Civil/Structural Crews の役割ができる要員をどのプロジェクトでいつ求められているかが分かるようになっている。
6つのプロジェクトが遂行中もしくは計画の状態にあり、キャパシティ(企業の要員投入計画値)を超えているのが分かる。
この場合、対象時期に増員を予定してキャパシティをあげて調整するか、プロジェクトの開始時期等の調整をすることが考えられる。

ここでは、プロジェクトの開始時期等の調整をする例をあげてみたいと思う。
⑤ 分析、調整<.b> であるので、もちろんプロジェクト優先度(規模、企業戦略など)は考慮すべきであるが、今回はシステムを使った調整例とする。
下図は、今後始める想定である計画中のプロジェクトの日程を調整してみた例である。
Oracle Primavera P6 のようなプロジェクト・ポートフォリオマネジメント機能を持ったシステムを使うと、この時期にプロジェクトが開始したら対象となる企業リソースは足りるのか、もしこのプロジェクトが開始しなかったら対象となる企業リソースの負荷はどうなるのかがシミュレーションできるようになっている。

もちろん、このようなシステムには全体的にキャパシティをもとにした企業リソースの最適化だけをするのではなく、リソース要求表(どの役割がどのプロジェクトでどのくらい要求されているか)やリソース稼働表(どの要員がどのプロジェクトにどのくらい入る予定か)の確認することも出来るので、これらを使って分析・調整することも可能だ。

さらに、スケジュール計画者が要員要求をしたあと、対象時期の稼働と役割(スキル)をもとに割当できるリソースのリスト確認と割当をすることもできる。
これによりスケジュール計画者が分析・調整をすることで企業リソースを最大限活用できるようになる。
ただし、これを行う上では企業としての割当ルールなどが必要であり、また実際には割当前に関係者との調整などが必要となってくる場合もある。

このように、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントのシステムを活用することにより、企業リソースを最適化するプロセスが回せるようになる。 これにより企業としてのリソース稼働管理の仕組みができあがり、リソースが不足する状態や待ちになる状態が軽減され、効率的な企業としてのリソース稼働管理が実現するのである。</p/>

さて今回は企業としてのプロジェクト管理の仕組み作りとしてリソース稼働管理の話をしてきた。
グローバル化などにより世界の各企業との競争が行われるなか、企業の限りある資源をいかに効率よく活用するかが利益を確保していける1つの重要な要素となっている。
みなさんも仕組みとシステムを駆使して企業の限りある資源を有効に使ってみてはいかがであろうか。

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カテゴリ:プロジェクトマネジメント