Column

コラム

2024/03/19

洋上風力発電プロジェクト成功の留意点 ~ 日本と海外の商習慣の違い

前回のコラムでは、洋上風力発電プロジェクト成功への留意事項「工程管理の責任範囲の拡大」についてお伝えしました。

今回はもう一つの留意事項、「日本と海外の商習慣の違い」に起因する留意点についてお伝えしたいと思います。



まず、日本と海外の商習慣について特徴的な違いを対比させてみます。

図版3.png


あえて一言で対比させると、「性善説と性悪説」、「信頼ベースと契約ベース」、「定性的と定量的」といった言葉が当てはまるかもしれません。

日本では、多くの社会的イベントがほぼ単一民族であることの相互認識や長年築いた信頼関係による暗黙の了解が、様々な問題を未然に防ぐ役割を果たしています。ビジネスでもこの文化が見られ、契約書にない状況や責任の曖昧な対処も、互いの信頼により問題解決が図られる傾向です。予想外の事態、例えば追加費用が発生しても、事後の話し合いで解決が期待できます。

対して海外ビジネスでは、将来の誤解や紛争を抑えるために責任範囲と計画を明確にしたうえで、言語や文化の差による曖昧さを避けるため、契約内容の明文化と合意、それに基づいた履行や交渉が前提です。逆に言えば、このプロセスを怠る・逸脱すると、後に大きな問題に発展するリスクが高まることを意味しています。



また前回のコラムでは、洋上風力発電プロジェクト特有の事情に触れ、「工事の遅れによる稼働期間の減少が投資回収リスクの増大に直結する」、ゆえに「受注者と事業者は計画通りの工程を維持・管理する責任を強く負う」ことをお伝えしました。
このことを念頭に、洋上風力発電のような大規模プロジェクトにおけるステークホルダー間の情報連携をイメージしてみます。

図版5.png


工程管理では、計画の進捗や遅延・変更の情報共有、例えばドキュメント承認による設計フェーズの完了確認や、想定外の要因による計画変更の合意などが行われます。
そしてこれらの情報は、プロジェクトが計画通りに進捗しているかを把握するのと同時に、契約の履行や修正に関連する意思決定の証拠でもあり、先に述べた「将来の誤解や紛争を最小限に抑えるため」の重要な証跡です。

特に洋上風力発電プロジェクトのような、海外ベンダーを含む多くのステークホルダーが関わる長期プロジェクトでは、重要情報の発信、受領、合意の記録と参照の確保が全ステークホルダーにとって必須です。

日本的な、信頼関係を前提とした暗黙の了解を期待しては「それ言ったはず」「それ...と思っていた」となり、紛争のリスクが高まります。



このようなステークホルダー間での情報連携の記録を、プロジェクトマネジメントでは「コレスポンデンス(Correspondence)」、通称「コレポン」と呼ばれます。

これには、メール、設計図面や仕様書の送付、会議記録、契約変更通知など、プロジェクト進行に関わる全ての情報の記録と参照を示す概念です。日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、先に挙げた海外の商習慣を背景に、海外プロジェクトでは「コレポン」が重要なプロジェクトマネジメント要素として広く認識されています。

この「コレポン」には、以下の要素の実現が求められます。

 伝達の保証  ■ドキュメントや文章が相手に必ず届く、かつ、届いたことを確認できる
 確実な記録と閲覧  ■全てのコミュニケーションが記録され、いつでも証跡として確認できる
 削除が不可能  ■不注意や故意に関わらず、誰もコミュニケーション記録を削除できない
 中立であること  ■ステークホルダーに、全てのデータにアクセスができる特権的な管理者が存在しない


一般的な情報共有の主な手段はメールやファイル共有ですが、この方法ではプロジェクト完了までの履歴を完全に記録し、追跡可能に保つことが困難です。また、ドキュメント管理システム(DMS)とワークフロー(WF)など組み合わせでも、「削除が不可能」「中立」を満たすことが難しく、海外プロジェクトではコレポン専用のITソリューションが利用されています。

その中でも「Oracle Aconex」は、ビジネスにおけるインターネットの活用が始まった黎明期にコレポン専用のSaaS(Software as a Service)として開発され、20年以上にわたり利用され続けているソリューションです。
上に挙げた要素の網羅はもちろんのこと、プロジェクト終了までユーザ数とストレージ容量が無制限に利用できる、などの利便性から高い評価を受けており、建設業界やエンジニアリング業界をはじめとした数多くのプロジェクトで採用されています。



海外流のビジネス環境では「それは言ったはず」という主張は通用せず、契約の履行や変更に関する証拠が提出できない場合、将来的に大きな問題(例えば賠償責任)の火種となりかねません。

工事が本格化する前やプロジェクト検討フェーズでは費用を抑えて利用できるプランも用意されていますので、ぜひ「Oracle Aconex」でコレポンの実践を検討しては如何でしょうか。

「Oracle Aconex」の詳細に関しては、弊社のホームページや製品概要資料をご参照ください。


このほか弊社コンサルタントによる別のコラムも「Oracle Aconex」の理解を深めるのに役立ちますので、ぜひご一読いただければと思います。

【弊社コラム】「それ言ったはず」は海外では通用しない ~コレポン管理~


また、Oracle社のホームページでは、海外の洋上風力発電プロジェクトにおける「Aconex」の活用事例が公開されていますので、こちらもぜひご参照ください。

【海外事例】Oracle Aconex Helps Siemens Gamesa Renewable Energy Power the World

この記事へのお問い合わせ 

関連リンク

Oracle Aconex

Oracle Aconexは、建設などプロジェクトのステークホルダー間で日々やり取りされる、膨大な「文書・図面ファイル」および「指示・コメント」を漏れなく記録するソリューションです。誰が・いつ・どのような意思決定をしたかが一元管理でき、コミュニケーションの円滑化に貢献。正確な情報の共有により、作業の手戻りの少ない、快適なコラボレーションが実現します。
「Oracle Aconex」詳細はこちら

カテゴリ:プロジェクトマネジメント