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2022/02/10
【8】企業としてのプロジェクト管理の仕組み作り(6) ~プロジェクトKPI分析~
※本文中のARES PRISMはブランド名を「Contruent Enterprise」に変更いたしました
プロジェクト責任者や現場責任者は、工程進捗・リソース負荷状況・コスト状況・生産性などを現状分析し対策を講じるために、手間と時間をかけて多種多様なレポートを受け取って情報を収集し、自分なりの整理と分析を行っている。
このような作業が、責任者の負担やレポートを作成する側の負担となっている。また情報の分析方法が責任者に依存してしまうため、企業としてもプロジェクト管理の属人化を招いている。
そこでいま注目を集めているのが、企業としてプロジェクト分析方法を考えて行くBI(ビジネス・インテリジェンス)を活用したプロジェクトKPI分析(キー・パフォーマンス・インデックス分析)である。
KPIやBIという言葉を聞くと、経営向けのイメージが強いと思われる。
しかし、最近ではプロジェクトで行われる業務の状況分析や製造現場の状況分析用にKPIを決め、BIで追跡を行いさまざまな分析・評価を行うことがトレンドになっている。
では、BIを活用したプロジェクトKPI分析の仕組み作りについて述べて行こう。
下図はプロジェクト関連と生産関連(製造業など内作が入る場合)の確認/評価/分析したい情報をまとめ、KPI分析を行う仕組みの例である。
プロジェクト管理システムの情報、設計/調達/工事に関連するシステムの情報、基幹システムからの情報、生産関連システムからの情報を集め、統合BIシステムでさまざまなKPI分析を行っている。
この例では組織側はプロジェクトサマリー分析などサマリー情報を、プロジェクト側では図書ステータスの分析や設計/調達/工事ステータス分析を、生産側ではジョブ進捗状況や工数などの分析を確認できるようになっている。またBIにより問題部分の追跡ができるようになっており、複数レポートで確認する必要がなくなっている。
では実際の統合BIシステムによるKPI分析の例を紹介していきたいと思う。
まずはプロジェクト情報分析として、以下4つの例を紹介する。
① プロジェクトサマリー分析
② 図書提出状況分析
③ 調達ステータス分析
④ 工事進捗分析
下図は「① プロジェクトサマリーKPI分析」の例である。
ここではプロジェクト全体の進捗状況、工数の予実、各WBSの状況が一目で分かる。
さらにSPI(スケジュール・パフォーマンス・インデックス)とCPI(コスト・パフォーマンス・インデックス)の低いところが色分けで分かるようになっており、ドリルダウンして追跡することにより、問題の詳細へたどりつけるようになっている。
① プロジェクトサマリー分析
下図は「② 図書提出状況分析」の例である。
ここでは各図書の提出状況として、図書分類ごとにステータスとして未提出数、未承認(提出し承認待ちになっているもの)、要再提出(コメントによる再提出が必要なもの)、承認済、それぞれ数が分かるようになっている。
これを見ると「設計図書」は14件中 9件が未完了(未承認、要再提出)であり、未承認の5件が提出済で承認待ちという状態になっているのが分かる。
さらに「計装チーム」に焦点を絞り、未承認2件をクリックすると追跡が行われ、対象となっている図書のドキュメントナンバーや名前、いつ提出したかが確認できる。
② 図書提出状況分析
下図は「③ 調達ステータス分析」の例である。
ここでは各調達品に対してRequisition(手配依頼)からDeliver on Site(現地到着)までのステータス状況を表現している。縦軸が機器/材料名、横軸がステータスイベントになっており、各機器/材料の手配状況はどうなのか、配送状況はどうなのか一目で確認できるようになっている。また予定より遅れている部分も色違いで警告される。
これによりスケジュールへの影響確認や調整への判断が迅速に行われるようになる。
③ 調達ステータス分析
下図は「④ 工事進捗分析」の例である。
ここでは工事全体をプログレスアカウントIDで明細をルールIDで表現しており、各工事(プログレスアカウントID)進捗率と工事明細(ルールID)のルールオブクレジット進捗率が分かるようになっている。下図の例では工事 PEVC-C06 をクリックし、PEVC-C06 工事明細を表示させることにより、工事明細(ルールID)V0021 と V0022 のルールオブクレジット進捗率の合計により、工事進捗率が30%になっていることが分かる。
④ 工事進捗分析
ここまで、プロジェクト情報分析の例をあげてきた。
次に生産関連システム情報分析として以下3つの例を紹介する。
a. ジョブ消化-バーンダウン分析
b. バッファ分析
c. ジョブステータス分析
下図は「a. ジョブ消化-バーンダウン分析」の例である。
ここではジョブ消化計画と完了ジョブ、追加ジョブと総ジョブ状況を表現している。
赤の折れ線グラフが計画のタスク消化予定、赤の棒グラフが追加ジョブ数、青の折れ線グラフが総ジョブ数、水色の点が最新のジョブ消化予定数を表現している。
これによると追加ジョブにより総ジョブ数が増加し、予定消化スケジュールに対し、キャッチアップとしてジョブ消化スケジュールが見直されているのが分かる。
またここでは表現していないが、工数情報も取ると工数消化のバーンダウンに切り替えることも可能で、ジョブ消化状況とそれにかかる工数状況が一目で確認できる。
a. ジョブ消化-バーンダウン分析
下図は「b. バッファ分析」の例である。
ここではFOB(Free On Board)までのバッファ日数の変動が分かるようにしている。
棒グラフでバッファの日数を表し、棒グラフの頂点を線で結ぶことにより、バッファがマイナスになっていないか一目で確認できるようになっている。
これを見るとスケジュール途中でマイナスのバッファが出ており、対象時期に対するスケジュールの調整(もしくはリソースの調整)が必要となっていることが分かる。
b. バッファ分析
下図は「c. ジョブステータス分析」の例である。
ここではジョブの完了状況や予定に対する遅れを分かるようにしている。
折れ線グラフでジョブの完成予定を棒グラフでジョブの完了実績を表現している。
これを見ると初期段階で予定以上のジョブ数が完了し、途中からジョブの消化が少なくなっている。
一見前倒しているイメージに見えるが、初期のジョブ完了数が予定の倍になっていることから、追跡して倍になっている完了ジョブの確認をしていくと予定にないジョブが行われているケースもある。BIを使用しているので、追跡することで細部まで確認できるようになっている。
c. ジョブステータス分析
以上、本コラムでは企業としてのプロジェクト管理の仕組み作りのBIを活用したプロジェクトKPI分析について述べてきた。
いくつかのプロジェクトKPI分析の例をあげたが、企業やプロジェクトにより分析したいKPIは異なってくる。よってKPIを何にするか、どの情報を集めるべきか、つねに確認できる仕組みを作れるかが重要になってくる。
弊社のEPMソリューションサービスー統合BIシステム構築では、ワークショップで確認したいKPIとその必要情報がどこにあるかなどを確認していき、情報を一元化する仕組みとシステムを構築している。
企業としてKPIを決め、情報収集と可視化をする仕組みを作ることにより、企業としてのプロジェクトKPI分析の仕組みができあがるのである。
プロジェクトKPI分析は、いままで企業として仕組み作りを検討されることは少なく、プロジェクト担当者が手間と時間をかけて必要情報を必死に集め、Excel に詳しい人間に協力を得ながら独自に確認、分析を行っているケースが多かったと思う。
企業としてのプロジェクト管理の仕組みを検討・構築する企業が増えている中、その一環としてBIを活用したプロジェクトKPI分析も取り入れる企業がでてきている。
次世代の企業としてのプロジェクト管理の仕組み作りとして、みなさんもBIを活用したプロジェクトKPI分析を検討してみてはいかがであろうか。
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カテゴリ:プロジェクトマネジメント