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2024/01/30
洋上風力発電プロジェクト成功の留意点 ~ 工程管理の責任範囲
現代社会が目覚ましく進化し、世界情勢が変わるにつれて、持続可能なエネルギーソリューションへの需要が国際的に高まっています。
このエネルギー転換の波の中でも特に洋上風力発電が世界的な注目を集めており、日本は国土を囲む豊かな海域を活かし、この新たなエネルギー源の開発に適した地理的環境を持っていると評価されています。
日本では2019年4月に施行された「再エネ海域利用法」に基づき、洋上風力発電のための促進区域、有望区域、および準備区域を定めて開発を促進しています。既にいくつかの区域で発電事業者が選定され、先駆けとなるプロジェクトを進行中の事業者においては、発電・売電の開始が間近に迫っています(2024年1月現在)。
<<図版1>>
出展:「制度の概要|洋上風力発電関連制度|なっとく!再生可能エネルギー 」(資源エネルギー庁)を加工して作成
国の後押しもあり今後ますます発展が見込まれる洋上風力発電プロジェクトですが、太陽光発電などの再生可能エネルギーと比べ事業規模も大きく、工事も複雑・長期にわたるため高い事業リスクを伴います。しかしまだ国内における先例が少なく、プロジェクト成功に向けた発電事業者や施工関係者のご苦労は大きいものと想像します。
特に、キーコンポーネントとなる風車の調達や海上での施工に関しては、洋上風力発電をリードする海外ベンダーとの連携が欠かせず、しばしば海外の商習慣に則ったプロジェクトマネジメントの必要性に迫られるようです。
このような背景から、海外のプロジェクトマネジメントで利用されるソリューションを長年提供している弊社に対し、日本の洋上風力発電プロジェクト関係者より "海外流のプロジェクトマネジメント" に関する問いあわせが多く寄せられております。
これらの経験をもとに、TIS千代田システムズが考える「洋上風力発電プロジェクト成功への留意点」を2点、お伝えしたいと思います。
ひとつ目は、各ステークホルダーの業務遂行、ひいては事業計画に大きな影響を及ぼす「工程管理」に関してです。
以下は洋上風力発電プロジェクトにおけるステークホルダーとの関係と、留意すべき視点を現したものになります。
もしかすると、国内工事で多く見られる「一括発注・請負」の契約に慣れた関係者にとっては、事業者と受注者の契約/承認(視点①)に複数の矢羽が存在することに違和感をもたれるかもしれません。しかし海外ベンダーとの連携が必要な洋上風力発電プロジェクトにおいては、各パッケージごとに分割発注 = バラコンで契約が行われることが一般的です。
実際には国内ベンダーの施工が1パッケージにまとめられる事があると想像しますが、風車の調達や特殊な海洋工事など、海外ベンダーとの連携においては分割発注となる事が多いようです。
このような場合、事業者は各パッケージ間の工程の調整にも積極的な関与が求められ(視点②)、プロジェクト全体工程の維持についても多くの責を負います(視点③)もちろん受注者においても、事業者や他の受注者と適切な工程の連携が欠かせません。
また、洋上風力発電事業は法規制により「FITによる売価×稼働期間」の売上キャップが想定されます。売価は事業者選定の入札で定められるため、工事の遅れは稼働期間の減少、すなわち投資回収リスクが高まります。
このため、受注者は事業者に、また事業者は出資者に対して、計画通りに工程を維持・管理する責任をより強く負います。
すなわち、海外ベンダーを含めた工程の維持管理の責を負う事業者とその受注者は、次のような要求にも応えられる工程管理ソリューションの利用が必要です。
・全てのステークホルダーの計画と進捗が統合して管理できること
・統合された工程情報をもとに、様々な視点で進捗確認が簡単にできること
・大規模プロジェクトの複雑な工程であっても、これらが実用的なスピードで動作すること
少なくとも、日本で多く利用される「Excelガントチャート」による工程管理手法では、適切な工程管理を維持することが難しいことは想像できるかと思います。
このような海外ベンダーを含めた多くのステークホルダーとの適切な工程管理が求められるプロジェクトにおいては「Primavera P6 EPPM」が広く利用されています。
30年以上にわたり数多くの海外プロジェクトで利用されてきた実績から、事業者の発注要件に「Primavera P6のデータで計画・進捗の提出」が明記されるほどの、グローバル・スタンダードな工程管理ソリューションです。
「Primavera P6 EPPM」の詳細についてはこちら
クリティカル・パス・メソッド(CPM)による計画の策定や、ガントチャートによるビジュアルな進捗把握など、工程管理ソリューションに求められる当たり前の機能に加え、先に挙げた要求にも全て応えられる仕組みが提供されています。
海外の事業者・受注者ともにPrimavera P6を駆使した工程管理のナレッジ蓄積があることからも、本ソリューションの利用がデファクトスタンダードと言えるでしょう。
工程管理の責任拡大への備え、ぜひ導入・利用に向けた準備をお勧めいたします。
Primavera P6 EPPMの詳細については、こちらのコラムも参考になるかと思いますので、ぜひご覧ください。
「企業としてのプロジェクト管理の仕組み作り(5) ~工程管理編~」
続いてのコラムでは、「洋上風力発電プロジェクト成功の留意点」の二つめ、「日本と海外の商習慣の違いへの備え」についてお伝えしたいと思います。
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カテゴリ:プロジェクトマネジメント