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2021/12/01

【2】「それ言ったはず」は海外では通用しない ~コレポン管理~

国内プロジェクトでは、よく口頭で「~お願いします」で作業が進んでしまう。

それで問題になったときに言った言わないのやりとりがよく始まり、結果として発注側/請負側で「まあこの件は後に・・・」となることがある。
私も国内プロジェクトではよく口頭で話をしてしまった経験がある。

しかし、契約社会の海外ではそうはいかない。きちっと文書で責められるし、
口頭で「それ言った」と言っても通用しない。そうすると、責められた方は急いで血眼になって議事録や履歴を探し始める。

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このようなプロジェクト関係者とのやりとりを海外ではコレスポンデンス管理、略してコレポン管理という。
このコレポン管理、まだパソコンが普及していなかったころは、たくさんのキングファイルにコレポン履歴を入れ、部屋を倉庫にして保管し、すぐに必要な書類が取り出せるように専任者をつけてコレポンを管理していたところが多い。

パソコンが普及するようになってからは、各社とも情報システム化が進んでいく。これにあわせて、プロジェクト側から社内の情報システム部門にこういうシステムが欲しいと要望するようになり、コレポン管理についても要望を出すプロジェクトが増えていった。

しかし、よくありがちなのがコレポン管理のシステム化について社内情報システム部門に話をすると通常のドキュメント管理システムの話になってしまうというケースだ。これは、プロジェクト側ではコレポンを関係各社と行うが、情報システム部門ではコレポン管理をする機会がほとんどないからだ。

しかし、コレポン管理システムとドキュメント管理システムはまったく違うものである。

ドキュメント管理システムによりドキュメントの一元管理やバージョン管理はできるようになる。また、ワークフローもつければ、どのドキュメントがどこで止まっているかは分かる。

しかし、成果物として発注者側へ提出した図面などのドキュメントに対し、いつのやりとりでどのようなコメントが入っていたかまで探すことは困難だ。

これでは、発注者側で「そんなことは言っていない」という言葉に「○月×日の成果物○○バージョンのコメントでこのように言っていた」と証明することができない。メールの履歴を探すなどに時間をかけても、見つからないこともある。

このような話は海外プロジェクト担当のお客様や社内の海外プロジェクト担当からよく聞いていた。

プロジェクトの現場で欲しいのは、下図のように成果物送付に対するやりとりの中で、発注者側でどの成果物にいつ、どのようなコメントがあったか証明できるようなシステムである。ドキュメントのバージョンやワークフローではなく、どこかに書かれているコメントを探したいのである。

では、プロジェクトの現場で、一般的に使用されているコレポン管理システムはどのようなものか。コレポン管理システムでは、やりとり記録を保存・管理、必要なときに検索・参照できるようになっている。また、管理番号の自動採番、やりとりの自動タグ付けなどもコレポン管理システムのポイントである。

下の画面はコレポン管理システムの画面であるが、プロジェクト関係者間専用にメールやドキュメント(主な記録対象は以下に明記)が管理されており、文書中にあるコメントまで検索できるようになっている。これにより言った言わないのやりとりが無くなるのである。

ACONEX画面

コレポン管理システムが通信記録対象とする主なもの

  ● 送付状(Transmittal)
  ● 通信記録(Correspondence)
  ● 質問状(RFI : Request for Information)
  ● 通知(Notice)
  ● 是正依頼(Non-Compliance Notice)
  ● レター(Letter)
  ● 議事録(MOM: Minutes of Meeting)
  ● メモ帳(Note Pad)
  ● 通話記録(Telephone Record)

近年はインターネットの普及やグローバル化、JV(ジョイントベンチャー)プロジェクトの増加などにより、プロジェクト間のコレポンも今までより更に多くの関係者へ迅速かつ正確に、また役割ごとに強固にセキュリティを守ることが求められている。

これらのことから、インターネットで使用でき、プロジェクト期間だけプロジェクトメンバー間のみで使用できるよう、コレポン管理もクラウドのシステムを使うプロジェクトが増えてきている。
多くの企業が集まってプロジェクトを進める中、自社のシステムを他社に使わせず、必要な期間だけ使用できる手軽さ、導入のしやすさなどが人気の理由のようだ。もちろんシステム提供側もセキュリティには万全を期しているようである。

以上、本コラムではコレポン管理について述べてきたが、ITの普及によりプロジェクトもプロジェクト業務の管理方法も複雑化し、システムもどんどん進化してきている。
次世代プロジェクトのコレポン管理に向け、コレポン管理の仕組みをしっかり設計し、必要なシステムを検討・導入し、そしてきちんと運用することにより、大きな情報の波を乗りこなせる強いプロジェクト、企業に成長していくだろう。

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カテゴリ:プロジェクトマネジメント