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コラム

2022/02/03

【6】企業としてのプロジェクト管理の仕組み作り(4) ~工事進捗管理編~

※本文中のARES PRISMはブランド名を「Contruent Enterprise」に変更いたしました

企業としてのプロジェクト管理の仕組み作りとして、これまで3回にわたり、プロジェクト管理会計、設計進捗管理、
調達ステータス管理について記載してきた。
そこで今回は工事進捗管理について述べていきたいと思う。

工事の場合、まず現場状態が進み具合を左右すると言える。たとえば、現場の天候による影響や、現地の地盤状態や地形の影響などは、工事を進める上では避けて通れない問題であり、スケジュール遅れや工事数量の増加などをもたらす。

企業としては、これらをリスクと捉え、コンティンジェンシーを含めたリスク対策をとる。ただし、実際に発生したときは、スケジュール遅延の説明根拠や工事数量増加による変更承認をうけるための交渉が行われるため、現場の状況を迅速に把握し、それらの情報をしっかり管理・共有できる状態にしなければならない。

しかし、このような工事状況や進捗管理をExcelなどで個別に管理してしまうケースが多い。これでは、管理ファイルの紛失が起きたり、進捗管理が属人的になったり、情報の共有ができなかったりと、悪いケースでは工事状況を説明できずに承認を得られず泣き寝入りをすることになってしまう。

このように進捗と変更が大きくコストに影響する工事進捗管理を、企業としてどのような仕組み作りをしていけば良いだろうか?

まずは企業として考える工事進捗の計算例から明記していこう。

下図は工事進捗管理の例である。 ここでは、工事進捗を管理する単位としてプログレス(工事進捗)アカウントを用いている。このプログレスアカウントには、ルールという工事明細が管理される。
このルール(工事明細)別に「計画数量」と「重み」、「計画完了日」を設定する。そして、工事が進んだら「実績数量」を入れて「ルール・オブ・クレジット進捗率(出来高計上ルールによる工事進捗率)」を計算させる。

下図の例では、

・V0021は1.0㎥の計画数量に対し、実績数量1.0㎥以上で実績完了日もあることから作業進捗100%完了しているため、重みを考慮してルール・オブ・クレジット進捗率を計算すると以下のとおりとなる。

 計画数量1.0㎥×作業進捗1(100%)×重み0.2(20%)=ルール・オブ・クレジット進捗率20%

・V0022は1.0㎥の計画数量に対し、実績数量0.5㎥で作業進捗50%となり、重みを考慮してルール・オブ・クレジット進捗率を計算すると、以下のとおりとなる。

 計画数量1.0㎥×作業進捗0.5(50%)×重み0.2(20%)=ルール・オブ・クレジット進捗率10%
よって、PEVC11-06の工事進捗率は30% となる。

上記のように企業としての進捗計算の考え方を統一して管理することにより、属人的な進捗管理から企業として統一された管理方法に変わっていく。

次に工事数量が変更になったケースについて明記する。

今回は、現場で作業を行ってみると地形や地盤の影響などで、計画の数量より実際の作業する数量が多かったというケースの例を考える。

下図V0021は、計画数量が1.0㎥に対して実績数量が1.2㎥となり数量進捗は120となっている。つまり0.2㎥分追加で作業したことになる。
このように、数量が変更された情報をきちんと管理することにより契約相手との交渉材料にする。

このような重要な情報は、迅速に状況を把握・共有し、漏れのないよう管理し、前述の進捗計算と併せ、しっかり管理できるシステム作りが必要である。

最近では、工事進捗の算出・管理を行い、関係者に情報を共有しながら、迅速に現場の状況が把握できる工事進捗管理のシステムを活用する企業が多くなってきている。

では、システムイメージを含めた具体的な例をあげていこう。 今回はARES PRISMの現場管理システムを使った例をあげたいと思う。
下図は工事進捗を管理する単位としてプログレス(工事進捗)アカウントに対し、工事明細ごとに数量で進捗を測定し、工事進捗率を計算させている例である。
画面左上のプログレス(工事進捗)アカウントPEVC11-C06に対し、画面下にその工事明細となる各ルールが管理されている。

ルール(工事明細)ごとに「計画数量」「重み(加重)」「計画終了日」を入れる、工事が進んだら「実績数量(数量完了済)」をそれぞれ入れて行く。実績数量が入ると「数量進捗率」と「ルール・オブ・クレジット進捗率(出来高計上ルールによる工事進捗率) 」が計算される。そして、各ルールのルール・オブ・クレジット進捗率が加算され、PEVC11-C06の工事進捗率が算出される。

また上図のV0021では、計画数量1㎥に対し実際の作業が1.2㎥、この作業増が影響して計画終了日よりも実績終了日が10日間遅れている。このようなシステムを使うと、交渉の材料となる重要な情報が漏れずに保管され共有される。

ここまで、工事進捗の算出・管理や数量の変更についてシステムイメージを述べてきた。しかし、工事の場合もうひとつ重要なことがある。
それは現場作業の状況が、いかに迅速にかつ正確に収集できるかである。

今回紹介しているARES PRISM現場管理用のシステムでは、前述した工事進捗管理と併せて現場報告用に特化したシステムを持つ。

上図のように現場からタブレットなどで担当作業の実績を入力するとルール(工事明細)の実績として反映される仕組みになっている。これにより現場の進み具合がすぐに把握できるようになり、工事進捗が即時に計算される。
これらにより、現場作業の状況が即座に反映され、工事進捗率がいつでも確認できる仕組みができあがる。

また下図の通り、ARES PRISMでは前回前々回 とコラムで記載してきた設計進捗管理と調達ステータス管理同様に現場管理システムもコスト管理システムとリンクする。そのため、現場管理システムで算出した進捗率は、プロジェクトとしてのコントロールアカウントの進捗率へ反映されプロジェクトの進捗率や完成予測コストを計算する。
これにより、プロジェクトの工事の現場状況報告から工事進捗率、工事のコスト関連までが企業としてわかる仕組みができあがる。

以上、本コラムでは工事進捗管理の仕組み作りについて述べてきた。

このように工事の現場状況と工事進捗率を常に共有化し、工事進捗状況や現場の変更状況などをプロジェクト管理システムに取り込むシステム作りをすることにより、企業としての工事進捗率をいつでも確認できる仕組み、また工事進捗率を考慮したプロジェクト管理会計の仕組みができあがる。

さて、4回にわたり企業としてのプロジェクト管理の仕組み作りとして、プロジェクト管理会計(コスト管理)、設計進捗管理、調達ステータス管理、工事進捗管理について記載してきた。

これらはまだ各プロジェクトでばらばらに管理されることも多いと思う。ただこのような企業としての取り組みを導入、もしくは導入に向けての準備をしているところは、非常に多くなってきているのも事実だ。

ここ数年は、弊社が受ける問い合わせもプロジェクト管理システム(またはプロジェクト管理製品)単体の問い合わせではなく、プロジェクト管理とERPなど基幹システムの連携やドキュメント管理と進捗管理の組み合わせ、プロジェクトスケジュールと調達ステータス管理の組み合わせ、企業全体のプロジェクト管理関連すべての組み合わせなど、企業システムとしての仕組みとシステムの提案依頼が多くなってきている。

みなさんも次世代プロジェクト管理の仕組みとして、企業としてのプロジェクト管理の仕組みを検討してみてはいかがであろうか。

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Contruent Enterpriseは、建設や工事など個々のプロジェクトごとに、管理会計ベースでのコスト管理を可能とするソリューション製品です。ERPなどの社内システムから集約したデータを集計し、将来発生が見込まれるコストを反映した、高精度な損益予測を実現。プロジェクトコストの見える化で、不採算案件の早期発見・対策にも貢献します。
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カテゴリ:プロジェクトマネジメント