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コラム

2022/02/10

【7】企業としてのプロジェクト管理の仕組み作り(5) ~工程管理編~

最近よくプロジェクトを有する大手企業が米国プロジェクトマネジメント協会PMI®(Project Management Institute)のPMP®(Project Management Professional)取得社員を増やす目標を掲げているのを新聞で見たり、耳にしたりする。
PMI®ではPMの知識体系をガイドにしたPMBOK®ガイドを作成しており、このガイドや各参考書などを勉強してPMP®資格の試験の臨む人が多い。

今回はPMP®試験のベースともなるPMBOK®ガイドの「プロジェクト・タイム・マネジメント」の範囲に入る工程管理について述べていきたいと思う。

工程管理という言葉は、プロジェクト管理にはもちろん、そのほかのケースでも使用されていて、その考え方は業種やプロジェクトにより捉え方がまったく違うものになる。
たとえば、プラント建設などのエンジニアリング業や建設業では、マスタースケジュール・詳細スケジュールなどがイメージされるが、組立製造業では、大日程・中日程・小日程で管理され、工程管理手法や考え方も変わってくる。

今回はプラント建設、ビル建設など大規模プロジェクトの工程管理について説明したいと思う。たとえば海外の大規模プロジェクトの場合、発注者側からCPM(クリティカルパス計算)手法を使って、クリティカルパススケジュールを作成することが求められる。CPMはPMBOK®ガイドでも紹介されており、ネットワーク手法とも呼ばれスケジュールの作業レベルをアクティビティ(またはタスク)と呼び、アクティビティの順序設定を行うことによりスケジュールを作成する。

下図はCPMで計算を行う例である。

 ① 各アクティビティを定義し期間の設定する
 ② アクティビティの順序設定を行う
 ③ 順序に従ってアクティビティを移動する

以上によりスケジュールが作成され、アクティビティの最早開始、最早終了、最遅開始、最遅終了とフロート(余裕期間)が求められる。
たとえば [2F建設準備 20日] のアクティビティについては、[1F建設 30日] が完了するまでに完了させればよいことになるので、30日-20日=10日のフロート(余裕期間)があることになる。あわせて前からの計算で最早開始・最早終了、後ろからの計算で最遅開始、最遅終了の日程がわかるようになる。

また上図の赤字部分は、余裕期間がなく、最早と最遅日付が同じになっている。
このアクティビティをクリティカルアクティビティ、その流れをクリティカルパスと呼び、この手順でクリティカルパスを算出する方法をCPM(クリティカルパス計算)という。

海外のプラント建設やビル建設などでは、発注者側からの仕様書にCPMでクリティカルパスを明確にしたスケジュールを提出するよう求められるケースが多い。
初めて海外の建設プロジェクトに関わる方は、CPMではなく独自にスケジュールを引いて、ここがクリティカルであると表現してしまい、発注者側からきちんとCPMでクリティカルを計算するよう再提出を求められるケースが多いようである。

さて、ここまでCPMによるスケジュール作成を説明してきたが、スケジュール作成時に重要なのがリソース計画である。リソースのピークだけが高い状態であると、そこに一時的にリソースを多数投入することになるため、人の短期導入によるコスト高や作業に慣れないまま離れてしまうという生産性低下が発生する。

下図は各アクティビティに作業者というリソースを割り当て10日単位で負荷状況を表現したものになる。これをリソースの山積みという。

上図の例で確認すると山積みを行った結果、4/1~4/10にリソースのピークができており、制限も超えているため、スケジュールの見直しが必要となる。

下図では、準備②アクティビティのフロートを使い4/21~4/30へ移動させている。これによりリソース負荷のピークが崩されて制限値内に収まり、後続アクティビティの開始もそのままで安定的なリソース投入となるスケジュール計画ができている。このフロートを使った方法をリソースの山崩し(もしくは平準化・円滑化)という。
このあたりについてはPMBOK®ガイドの「資源最適化技法」で紹介している。

以上のように大規模プロジェクトの場合は、CPMや山積み、山崩しを行ってスケジュールを作成するが、これらを手動で行うのは非常に手間がかかるため、システムを使うケースが多い。

では、いままでの話をシステムを使うとどうなるか説明したいと思う。
今回はさまざまなスケジューリングに強いOracle Primavera P6を使った例をあげたいと思う。下図はOracle Primavera P6でスケジュール作成した例である。

 ① 各アクティビティを定義し期間を設定する
 ② 画面上でアクティビティ間の順序をつける
 ③ 計算ボタンを押す(順序に合わせアクティビティが移動される)

以上3つのステップで、各アクティビティの「最早開始/終了」「最遅開始/終了」「フロート」が計算され、クリティカルパスは赤で表現される。
ここまでがCPMによるスケジュール作成。このあとリソースの山積みと山崩し(平準化・円滑化)を行う。

 ④ 各アクティビティにリソース量を入力し、山積みを表示する
 ⑤ 山崩しボタンで山崩しを実行する

下図のように、このようなシステムを使うとスケジュール作成はスムーズにできるようになる。またこのようなシステムでは次にクリティカルになりそうな複数フロートパスの算出シミュレーションや山崩しの優先度など多数の機能が含まれている。

ここまで、工程計画について話をしてきた。
このあとは進捗管理と予実の話になるが、これはコラム第4回の設計進捗管理編第5回の調達ステータス管理編第6回の工事進捗管理編 に記載した方法で下図のとおり設計/調達/工事の進捗と生産性を測定していく仕組みを活用する。

工程管理側は上図の仕組みから収集した進捗と生産性の情報を把握・分析し、アクティビティ残期間(もしくは完了予定)を修正し、再度システムでCPM計算と山崩しを行いスケジュールを更新する。しかし、単純にマイルストンや納期を遅らせるわけにはいかない。
PMBOK®ガイドでは「スケジュール短縮」でクラッシングとファスト・トラッキングという2つの手法を紹介している。クラッシングとはリソースを増やすことによりアクティビティ残期間を縮める方法、ファスト・トラッキングとはアクティビティ順序設定を変えて並行作業させる方法である。下図はファスト・トラッキングの例である。

以上のように、工程管理ではスケジュール作成でCPM、リソース山積み・山崩しを使用し、スケジュールのコントロールでは、進捗と生産性の確認後ファスト・トラッキングやクラッシング手法を用いてスケジュールの見直しを行っていく。

今回は工程管理の手法を中心に説明したが、これはあくまでもプロジェクトでどのようにスケジューリングしていくかの話になる。
実際に企業として取り組むべきことは、プロジェクトに関わる人たちの工程管理用語や考え方の教育、システム作りによる情報共有化を行い企業としてのプロジェクト管理力を向上することである。このようなことからも国際標準的なPMの考え方としてPMI®のPMBOK®ガイドやPMP®資格が企業に注目されているのであろう。

最後に海外の大規模プロジェクト以外の工程管理にも少し触れておきたいと思う。
例えば、組立製造の量産では設備という制約が入るため、設備が重ならないスケジュールを作成しなくてはならないため、下図のようなスケジュール作成になってくる。

この他にも企業として全体プロジェクトの工程管理をしていくケース、人のスキル(専門リーダー)が中心となるプロジェクトの工程管理など、業種やプロジェクト規模、役割、管理内容により工程管理はさまざまである。
企業として業種や有するプロジェクトを考慮し、全体を見据えて工程管理の仕組みを作っていくことも必要で、これらの仕組み作りにより企業の競争力強化が実現するであろう。

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